メールマガジンアーカイブ(2023年8月)

※本記事は,2023年8月に,顧問先様へ配信したメールマガジンのアーカイブです。

皆様

万和法律事務所の弁護士福本・中島・竹田です。

今回のメールマガジンでは、株主総会に関するニュースについてご紹介します。

———————————-以下引用————————————

鳥取市で都市ガス供給事業を営む「鳥取ガス」の関連会社「鳥取ガス産業」(同市五反田町)の株主総会が開かれていないのに役員選任が決議されたとして、株主の男性(64)が同社を相手取り、決議が存在しないことの確認を求めて鳥取地裁に提訴した。【山田泰正】

 提訴は7月21日付で、第1回口頭弁論は9月4日午前11時から。訴状などによると、男性は鳥取市在住の同社OBで、父親から引き継いだ鳥取ガス産業の株式約4200株を保有する。5月19日付の株主総会の招集通知を受け取り、記載通りの5月29日午前10時、同社を訪れた。しかし、会場の会議室には会社側や株主など関係者はおらず、顔見知りの幹部社員から「社長は不在」「何にも準備していない」などと説明を受けたという。総会は開かれず、男性はそのまま帰宅した。

 その後、「株主総会で役員選任がなされた」との通知が届いたため、不審に思い代理人弁護士を通じて確認すると、鳥取地方法務局には5月29日に株主総会で決議されたことを前提とする役員登記が保管されていることが判明。男性は「会社法で定められた株主総会の開催を無視するなどコンプライアンス軽視が甚だしい。公益事業を営む会社として到底許容できない」として、提訴に踏み切った。

 同社総務人事チームは、取材に対し株主総会を開催したかどうかを明らかにせず、「訴状を精査して、適切に対応する」との談話を出した。

 鳥取ガスと鳥取ガス産業を巡っては、役員の不適切な経理処理を上層部に指摘した元幹部社員3人が、自宅謹慎を命じられたうえ不当に解雇されたとして、地位保全と賃金支払いを求める仮処分を同地裁に申し立てている。

 男性は昨年まで委任状を提出し、実際に株主総会の会場を訪れるのは初めて。今年は幹部社員3人の解雇問題もあり、「なぜそのようなことになったのか、直接、経営陣に事実関係を問いただそうと思い、出席を決めた。株主としての発言の機会を行使できずに新しい役員の顔ぶれを決められ、看過できない」と話している。

(令和5年8月2日 毎日新聞)

———————————-引用ここまで————————————

今回の事例は,株主総会が実施されていないという極端なものでしたが,株主総会の招集手続等が正しく行われなかった場合にも,株主総会での決議が無効となってしまう場合があります。例えば,一部の株主に招集通知を行わなかった場合や,総会において取締役の説明義務違反があった場合などは,株主総会決議の取消事由があるとして,決議が無効となる可能性があります。

決議が無効とされてしまった場合,場合によっては,取締役の選任が無効となり,当該取締役が参加した取締役会の決議が無効となり,当該取締役会決議によって行われた取引が無効となるなど,無効が連鎖していってしまう場合があります。また,取締役の役員報酬なども,株主総会にて定める必要がありますので,株主総会が無効となれば,役員報酬も無効となってしまう場合があります。

このように,株主総会のルールへの違反は,会社や取引に重大な影響を及ぼし得るものです。

自社の株主総会にご不安を感じられた際には、遠慮なくご相談いただけますと幸いです。

(文責:弁護士 竹田 仁)

※本メールマガジンの転載、紹介は可能です。但し、全文を必ず掲載して下さい。