メールマガジンアーカイブ(2025年2月)

※本記事は,2025年2月に,顧問先様へ配信したメールマガジンのアーカイブです。

皆様

万和法律事務所の弁護士福本・中島・竹田です。

今回のメールマガジンでは、今年の4月に施行された改正育児・介護休業法に関するニュースについてご紹介します。

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団塊世代(1947〜49年生まれ)全員が昨年末までに75歳以上になった。加齢に伴う介護・医療リスクが高まる境目で、高齢化問題は今年さらなる深刻な段階に移行する。いわゆる2025年問題だ。今年4月施行の改正育児・介護休業法は介護離職防止のための雇用環境整備を企業に義務付ける。働きながら老親らを介護するビジネスケアラーへの備えを企業は急がなくてはいけない。

「介護状態を(部下に)気軽に聞いてよいのか悩む」「私は腫れ物扱いされるより、よいことも悪いことも職場で共有したい」。日立ソリューションズが昨年12月に開催した仕事と介護を考える全社イベント。介護中の社員とその上司ら4人がパネルディスカッションに登壇し、胸の内を語り合った。

全社イベントは23年に次ぎ、2回目の開催だ。ほかにも当事者によるトークライブの定期開催や社内コミュニティー立ち上げ、管理職向け研修など介護をオープンに相談し合える企業文化の醸成に力を注いでいる。きっかけは1つの事業部門でほぼ同時に3人の管理職が介護離職を相談したことだ。「まだ先」と思っていた介護との両立問題が確実に広がっていると痛感した。

国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、25年の75歳以上人口は2155万人に上り、わずか5年で300万人近くも増えた。4月施行の改正育児・介護休業法では、介護当事者への社内制度の周知や利用意向の確認を企業に義務付ける。企業の対応は遅れている。マイナビが昨年7月実施した「企業におけるビジネスケアラー支援実態調査」では「既に支援制度があり、内容も十分である」とする回答は11.5%にとどまった。

「上司に相談しない」3割

同じ両立問題でも、子育てと違って介護は話題にしづらく、潜在化しやすい。そのために課題認識の浸透は時間を要する。アフラック生命保険は17年から両立セミナーを毎年開くほか、両立ハンドブックをつくったり、当事者のコミュニティーを立ち上げたりしてきた。当初より理解は広がっているが、それでも「介護に直面したら働き続けられるか不安だ」とする社員が現在も54.6%を占める。介護中の社員も3割が上司に「相談しない」という。

いつまで介護を続けるの?――昨年に実施した個別聞き取り調査では、こんな上司の心ない発言に胸を痛めている社員もいた。「職場や上司の理解とサポート体制をさらに高めないとビジネスケアラー問題は解決できない」(ダイバーシティ&インクルージョン推進部)

SBI金融経済研究所の政井貴子理事長は20年以上も実母を介護しながら仕事を続けている。この間、新生銀行(現SBI新生銀行)で女性初の執行役員に就き、16~21年は日本銀行審議委員を務めた。夫の協力を得て海外出張にも行き、ここぞという場面では睡眠時間を削ってでも仕事に注力した。そんな自らの経験も踏まえて「介護離職は勧めない。親をなくした後の自分の人生もある。経済力を維持した方が介護の選択肢も広がる」と助言する。

介護との両立実現は当事者だけの課題ではない。経済産業省は、介護離職や両立に伴う生産性低下などにより30年には国全体の経済損失が約9兆円に達すると推計する。政井氏は「老親の介護に直面するのはちょうど働き盛りの年代。どうすれば生産性を落とさずに働き続けられるか。管理職のマネジメント力の向上を急がなくてはいけない」と強調する。

(令和7年1月3日 日本経済新聞より引用)

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 育児・介護休業法の改正により、令和7年4月1日以降、事業主は以下の ①~④いずれかの措置を講じなければならないとされています。

① 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施

② 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)

③ 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供

④ 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の取得・利用促進に関する方針の周知 

 上記①の研修の実施のほか、相談窓口設置や、事例収集・提供、方針の周知につきましては、例えば従業員のプライバシーや個人情報の保護の観点で、悩ましい事案が出てくることが予想されます。そのような場合には、遠慮なく相談いただけましたら幸いです。

(文責:弁護士 中島裕一)

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